孤独の自炊外伝 #001: ライフハックの葬列 (復刻版)

1.驕(おご)り、昂(たかぶ)っていた日々 名作、もとい 迷作「孤独の自炊」シリーズで、地方を飛び回る 呑兵衛なフリーの雑貨商、腹之下三郎。 ビジネスホテルの、あの特有の乾いた空気の中で、 奴は何度も「成功」を収めてきた。 備え付けの電子レンジ。 その狭い庫内に、奴は食材を詰めたジップロックのような耐熱密封ビニール袋を放り込む。 加熱ボタンを押せば、数分後には温かい食事が完成する。 しかも、こぼさないよう気をつければ、食器さえ不要になる。…

孤独の自炊 #011:関西風貝スープ

地方を飛び回る、呑兵衛なフリーの雑貨商、腹之足三郎。 無事、今日も仕事が終わり、ビジホへ向かうの途中、 偶然見かけた地元のスーパーへ吸い寄せられた… 旅先のスーパーは、どうも胸がざわつく。 値下げシールの貼られた生鮮食品やお惣菜が、 「兄ちゃん、こうてくれんか~」 と言っているように見える。 今日は簡単なもので済ませたいので、レンチンでできるアサリの酒蒸しでもと魚売り場へ来てみたが、この頃、国産のアサリはあまりみなくなったような気がする。 代わりに見つけたのは、値下げシールの張られた、安いベビーホタテ。 小ぶりだが、身はしっかりしている。…

孤独の自炊 #010:つまらないイカめし

~ 函館の夜に、輸入アカイカやヤリイカが泣いている ~ 今日も、なんとか函館での仕事は終わった。 いつものように、ビジホのチェックイン前にスーパーに立ち寄った。 かつてここはスルメイカの水揚げ日本一だった街だ。ピーク時は年間数万トン、いや、もっと昔はもっと獲れてたはず。函館駅の弁当売り場で「いかめし」が名物になるくらい、イカが街の顔だった。 今は違う。 鮮魚コーナーの隅っこに、ボイル済みの「ソフトイカ(輸入アカイカ)」や「ヤリイカ」のパックが並んでいる。 値下げシールが斜めに貼られて、まるで 「もう…

孤独の自炊 #009:懺悔湯(ザンゲタン)

地方を飛び回る、呑兵衛なフリーの雑貨商、腹之足三郎。 やっと、仕事が終わり、ビジネスホテルのチェックインまえに、途中のスーパーに立ち寄る。 夕方のスーパーの精肉売り場、値下げシールを貼られた鶏肉が、 まるで「助けてくれんね?」とでも言いたげにこちらを見ていた。 ここは福岡。 釜山まで200kmちょっと。 海の向こうの匂いが、冬の風に混じって届くような土地だ。 そんな場所で、値下げシールが張られた鶏肉に呼び止められたら、 そりゃあサンゲタンのことを思い出してしまう。 「よかよか、連れて帰るけん。」…

孤独の自炊 #008:タコ飯の悲鳴ばい

※熊本県人からいただいたイリコ出汁、もとい、駄目出し。 「これはタコの混ぜご飯たい。 本来のタコ飯みたいに一緒に炊き込んどらんけん、ちょっと影のタコ飯やね。」 昨日、スーパーに立ち寄ったとき、悲鳴が聞こえてきた。 「だれか、助けてくれんね~!」 悲鳴のする魚売り場に行ってみると、顔が真っ赤・・・ではなく、赤黒くくすんで、息も絶え絶えなタコがトレーの上で悲鳴をあげていたのだった。 「兄ちゃん、買うてくれー!」 「よし、俺が助けてやる、心配するな。一晩仕事にでかけるが、おとなしく待っているんだぞ。」 と、声をかけ、会計をすませた三郎はビジホへ戻ると、すぐタコのトレーを冷蔵庫にしまいこんだ。(※タコやイカはかなり長く冷凍保存できます。) 翌日の夜。…

孤独の自炊 #007:茄子(ナス)チャンプルー風

※ 本稿は、麻婆の前提とされることが多い「挽肉」を使用しない前提の記事です。麻婆界隈の方々のご迷惑にならないよう、呼び名に「麻婆」は含めておりません。 沖縄での仕事を終え、やっと本州の空港にたどり着いた、地方を飛び回る、呑兵衛なフリーの雑貨商、腹之足三郎。 とりあえず、ビジネスホテルにチェックインするまえに、途中のスーパーに立ち寄る。 ふと、目にとび込んできたのは、季節外れのナス。 沖縄の市場で見たのは、ひょろりとした長ナスだった。 ヤマト(本土)のスーパーに並ぶ小ぶりなナスは、形こそ違えど、味噌と油を欲しがる性質(さが)は同じはずだ。 そして、わざとらしく、茄子の脇におかれていたのは、大手メーカーの「麻婆茄子」用のパック調味料だ。 箱の裏に書かれた「用意するもの:ナス3本」という命令に従うだけの調理。 そこに、もはや自炊の喜びはなく、あるのは、メーカーのシステムの末端に組み込まれた「下請け仕事」ではないか。…