孤独の自炊 #007:茄子(ナス)チャンプルー風

※ 本稿は、麻婆の前提とされることが多い「挽肉」を使用しない前提の記事です。麻婆界隈の方々のご迷惑にならないよう、呼び名に「麻婆」は含めておりません。
既製品の呪縛
沖縄での仕事を終え、やっと本州の空港にたどり着いた、地方を飛び回る、呑兵衛なフリーの雑貨商、腹之足三郎。
とりあえず、ビジネスホテルにチェックインするまえに、途中のスーパーに立ち寄る。
ふと、目にとび込んできたのは、季節外れのナス。
沖縄の市場で見たのは、ひょろりとした長ナスだった。
ヤマト(本土)のスーパーに並ぶ小ぶりなナスは、形こそ違えど、味噌と油を欲しがる性質(さが)は同じはずだ。
そして、わざとらしく、茄子の脇におかれていたのは、大手メーカーの「麻婆茄子」用のパック調味料だ。
箱の裏に書かれた「用意するもの:ナス3本」という命令に従うだけの調理。
そこに、もはや自炊の喜びはなく、あるのは、メーカーのシステムの末端に組み込まれた「下請け仕事」ではないか。
(それでも、急ぎの時などの応急対策用としては使用可能です。)
三郎はナスを手に取り、豆腐を横に並べる。
「『麻婆茄子』という、昭和のメーカーが作り上げた虚像を、沖縄の知恵『チャンプルー』で解体し、再構築してやる。」
「チャンプルー」という名の聖域
ともすると「混ぜるもの」と誤解されていることが多いチャンプルーだが、そこには、豆腐(特に島豆腐)と野菜の炒め物、という譲れない一線がある。
だが、ここはウチナー(沖縄)から遠く離れたビジネスホテル。
このあたりのスーパーでは島豆腐は、ほとんど見かけられない。
ならば、普通の木綿豆腐に(沖縄で主役の不在を埋めるピンチヒッターを呼ぶように)カマシをさせるまでだ。
【今回の偽装工作(チャンプルー化の手順)】
ビジホでのレンジ加熱は、加熱用ビニール袋での加熱が前提だ。
だが、ジップロックなど、多くの、耐熱密封ビニール袋は、レンジ解凍にはつかえても、レンジ加熱には非常時の例外用、自己責任用として、でないとつかえない…悲しい。😖
だが、俺には、シリコン耐熱袋という、秘密兵器がある。
参考:孤独の自炊外伝 #001: ライフハックの葬列 (復刻版)
1. 豆腐の「強制水切り」
豆腐1/2丁(約150g〜200g)の場合:
500W〜600Wで 2分〜2分30秒
キッチンペーパーに包んで加熱し、取り出したあとに重し(湯呑みなど)を乗せて数分放置。これで「カマシ」としての強固な食感が生まれる。
2. ナスの「擬似油通し」
ナス中サイズ1〜2本(乱切りにして少量の油をまぶしたもの):
600Wで 2分〜3分
ナスがしんなりして、色が鮮やかになればOK。
ここでしっかり火を通しておくのが、最後にタレと合わせた時に「水っぽくならない」秘訣だ。
3. 最終結合(タレを絡める)
水切りを終えた豆腐を、あえて手で一口大にちぎる。包丁の無機質な切り口ではなく、この無骨な断面こそが、辛味噌の旨味を深く、強く抱きかかえるのだ。
ナスと合わせ、市販の「麻婆豆腐」か「麻婆なす」用調味料、または、後述の辛味噌ダレを流し込み、最後の加熱へ。
600Wで 1分〜1分30秒
電子レンジが唸りを上げ、ヤマトの食材たちがウチナーへと変貌を遂げていく。
全体が熱々になり、片栗粉に火が通ってタレに少しツヤが出れば完成だ。
この直後に「鰹節の絨毯」を敷き詰めて、余分な水分を封じ込める。
見栄を気にするなら、上にも鰹節を振りかければいい。
仕上げに、好みで山椒、あるいは花椒(ホアジャオ)も少々。
前者はカツオの香りを研ぎ澄ませ、
後者は舌の上に異国の熱狂を連れてくる。
どちらを選ぶかは、今夜の自分が、どこの空気を求めているか次第だ。
結び:自由への一口と、沖縄の潮風
いま、ここに漂うのは中華の香りではない。
「鰹節とナス、そして焦げた味噌が混ざり合った、
泥臭くも力強い、琉球の「チャンプルー」の香り…
……確かに、これは麻婆茄子ではない。
だが、俺のナスチャンプルーなのか?」
泡盛のシークヮーサー(なければ、レモンかグレープフルーツ)割りを喉に流し込む。
沖縄の潮風のような爽やかな味わいが口いっぱいに広がる。
「この風はなんだ……
これは、ナスチャンプルー”風”だ!
『風(ふう)』と呼ぶのは、まがいものの意味ではない。
エアコンの微かな風が流れるこの狭い部屋に、
たしかに今、沖縄の潮風が吹き抜けた。 ⛵
その風を感じた俺だけが、この一皿をそう呼ぶ権利があるのだ」
システムの網の目を潜り抜けた勝利を噛みしめる。

市販の麻婆茄子の素を使いたくない場合
スーパーなどでも揃いやすい材料を想定しています。(1人前の目安)
茄子
中サイズのもの:1~2本
木綿豆腐
小さなパック (150g~200g):1個
辛味噌だれ
辛味噌(または味噌:出来れば赤味噌 + ラー油少々): 大さじ1/2
オイスターソース: 小さじ1/2 なくても可。その場合、辛味噌多め。
粉末鶏ガラスープ: 小さじ1/2
砂糖(スティックシュガー): 1/2本〜1本(味噌の塩角を取るため)
片栗粉: 小さじ1/2(「とろみ」ではなく、具材に「味を吸い付かせる」接着剤として)
水: 大さじ2
ニンニク:少々(チューブニンニクで可) なくても可
生姜:少々(チューブ生姜で可) なくても可
粉山椒、または花椒(ホアジャオ):少々 なくても可
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