孤独の自炊 #009:懺悔湯(ザンゲタン)

地方を飛び回る、呑兵衛なフリーの雑貨商、腹之足三郎。

やっと、仕事が終わり、ビジネスホテルのチェックインまえに、途中のスーパーに立ち寄る。

夕方のスーパーの精肉売り場、値下げシールを貼られた鶏肉が、 まるで「助けてくれんね?」とでも言いたげにこちらを見ていた。

ここは福岡。 釜山まで200kmちょっと。 海の向こうの匂いが、冬の風に混じって届くような土地だ。 そんな場所で、値下げシールが張られた鶏肉に呼び止められたら、 そりゃあサンゲタンのことを思い出してしまう。

「よかよか、連れて帰るけん。」 そう声をかけて、鶏肉をカゴに入れた。

■ 私が傷つけてしまった人(パック切り餅)

ふと、カバンの中をみると、隅っこには、いつ入れたんだかすっかり忘れていた、かわいそうなパック切り餅…

この窮屈な世界に押し込められた、かわいそうな純白の結晶は、人生の厳しさを教えてくれているようだ。

■ 懺悔の言葉

この餅、 「明日食べよう」「明日焼こう」と言い続けて、だいぶ長いこと放ったらかしにしたまんまだった。

食べ物を粗末にしていた罪深さに気づき、涙がこぼれそうになった。
「ごめんね」と心の中で何度かつぶやいた。

今日こそは使うけん。 今日こそは、ちゃんと食べるけん。
うん、今日はサンゲタン風スープを作るけん。

餅がふくれっ面にならんでも、スープに沈めればええ。
もち米の代わりに、とろけてくれればそれで十分。

そうだ、このスープの名前は、 |懺悔湯《ザンゲタン》 とでも呼ぶことにしよう。

■ 懺悔を聞いてくれるメンバー

  • 鶏肉(もも肉、手羽肉がおすすめ。出来合いの鳥団子でも可)

  • 野菜(大根、白菜やネギなどお好みのもの)

  • 調味料

    • チューブにんにく

    • チューブしょうが

    • 酒(大さじ1)

■懺悔室に入る準備(下ごしらえ)

鶏肉に、調味料をを揉み込んで10分置く。 これだけで、鶏の匂いはすっと消え、 「韓国料理の入り口」に立ったような気分になる。
(出来合いの鳥団子なら、下ごしらえも不要です。)

■ 懺悔中に口を潤す水(スープ)の準備

鍋に水を張り、 顆粒の鶏ガラスープをひとさじ。 そこへ粉末の高麗人参茶を、ほんの少し。 入れすぎると苦くなるので、まずは控えめに。

白菜の白いところをざくざく入れ、 ネギの青い部分も放り込む。 火をつけると、部屋に“韓国の冬”みたいな匂いが広がる。

【ヒント】
もし、ドラッグストアなどで売っている高麗人参茶(TVでうるさい宣伝をしているバカ高いものではなく、安いもので十分。)があれば、結構、本格的な味に近づきます。

また、スリごまと山芋(お好み焼き素材売り場で、粉末の山芋パウダーが売られていますが、これも便利です。)を入れると、なぜか、高麗人参ぽい味になりました。(確認済) 下記の記事はとても参考になりました。

https://hokuohkurashi.com/note/187113

■ 懺悔で一番つらい、灼熱の告白

餅は、できれば焼いて香ばしさを出してから、最後に沈める。

だが、ここはビジホ。
お雑煮ではないのだからから、最初っから放り込んでおいてOK。
むしろ、スープを吸って、ゆっくり溶けていく。
もち米の代わりとしては、むしろ優秀だ。

【ヒント】
米粉でもいいです。
小麦粉でもトロミはつきます。ちょっと雰囲気は変わりますが。
トロミがなくても、懺悔ポトフとしては妥協できるかも。
ただし、漉し器などがないとダマになりやすいので、どちらもビジホ向きではありません。

■ 懺悔の閉め(少し煮込めば、もう完成)

材料を耐熱密封ビニール袋(例:ジップロックやリード冷凍保存バッグなど)に放り込んで、封は少しあけておく。

耐熱密封ビニール袋は不適切なことがわかりました。🙇
別記事、孤独の自炊外伝で、対案をご紹介しています。💡

レンチンなら600Wで3分(お餅が柔らかく鶏肉の表面が十分白くなるまで)、更に200Wで5分(全体に十分火が通り、柔らかくなるまで。)

鶏はほろりと崩れ、 白菜は甘く、 餅は半分溶けて、半分形を残している。

最後にごま油を数滴。 もし、あれば、ネギの白い部分を散らすと、 急に“韓国料理の顔”になるから不思議だ。

【ヒント】
ご家庭でなら、普通のお鍋で、沸騰後15分ほどの弱火で煮込めばOKです。


ニンジンや白菜も入れてみました。

■ 懺悔の後の孤独の反省会

福岡の冬は、韓国の冬とどこか似ている。 海の向こうの匂いが混じる風のせいか、 こういう薬膳スープがやけにしっくりくる。

半額の鶏肉と、いつ買ったか忘れたお餅で作った 懺悔湯《ザンゲタン》
贅沢ではないけれど、 体の芯がじんわり温まる、 そんな一杯になった。

(了)


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  • この記事は、以前noteに投稿していた記事の復刻版です。復刻にあたり、note内のリンクは外し、当サイトでの該当記事へのリンクに変更しています。